
私たちの伝統とは
私たちは、伝統を「過去のかたちをそのまま残すべきもの」とは考えていません。
伝統とは、時代ごとの暮らしや価値観の中で育まれた知恵や工夫の積み重ねであり、
人々の感性や想いが息づいた「生きた文化の結晶」だと考えています。
だからこそ、伝統は「守るべきもの」ではなく、
現代の感性や暮らしにふさわしいかたちで再解釈し、受け継いでいくべきもの。
新たな工夫や価値を加えていくことも、また真の継承の一つだと捉えています。
こうした変化が、ときに「伝統の破壊」や「本質の損失」と捉えられることもあります。
ですが私たちは、これまでの先人たちもまた、本質への敬意を持ちつつ、時代に応じて価値を編み直しながら、伝統を未来へと手渡してきたと考えています。
一方で、「生きた文化の結晶」を深く理解することなく、安易にかたちを変えてしまう行為が存在することも事実です。
形式だけをなぞるのではなく、そこに込められた精神や知恵に目を向けることが、今こそ求められています。
また文化財などのように、できる限り元の状態を保ちながら後世へ残すことも、かけがえのない営みです。
私たちはそれを否定するものではありません。
むしろ「どのような状態で引き継ぐか」を問い続け、丁寧に工夫を積み重ねていく行為こそが、真の継承だと考えています。
大切なのは、何が変わったかではなく、何が引き継がれているか。
変化するものを頭ごなしに否定するのではなく、寛容なまなざし、本質を見極める理解、そして対話を重ねる姿勢が、これからの時代に必要だと私たちは感じています。
変わらず受け継がれる伝統もあれば、かたちを変えて続いていく伝統もある。
その両方の側面を併せ持つ日本の文化は、世界でも類を見ない、かけがえのない価値を持った文化だと考えています。